母子保健指導者研修会
workshop・report
母子保健指導者研修会
令和6年度 母子保健指導者研修会を開催しました
■日 時 :令和6年10月29日(火) 13時15分から16時20分まで
■開催方法 :集合及びオンライン(Zoom)のハイブリット形式
■会 場 :宮崎県総合保健センター5階大研修室
■対 象 者 :行政の母子保健・子育て支援担当、産婦人科医療機関職員、助産院関係者等
■参加所属数:59箇所
■プログラム:
講演Ⅰ「妊産婦のメンタルヘルスの基礎知識」
講師 社会医療法人同心会 古賀総合病院 精神科医長 陣内 紗織 氏
講演Ⅱ「産後の母親のケアについて ~産婦人科医の立場から~」
講師 宮崎大学医学部附属病院 産婦人科 総合周産期母子医療センター
病棟医長 後藤 智子 氏
取組発表1「都城市 産後ケア事業の取り組みについて」
講師 都城市 こども家庭課 おやこ保健支援担当
副主幹 久多見 ちとせ 氏
取組発表2「当院での産後ケアの取り組み」
講師 中山産婦人科医院 助産師 村上 良美 氏
取組発表3「産後ケアの実際 ~今、産後ケアに求められているもの~」
講師 ほのか助産院 院長 安藤 直美 氏
■内 容:
当研修会は、県委託事業として母子保健サービスの第一線で活動している関係者を対象に、実践に即した研修会を行うことで地域での母子保健活動の向上を図る目的で開催している。
今年度は、令和3年度から市町村の努力義務となり、令和6年度末までの全国展開を目指すとされている市町村の産後ケア事業をテーマに、周産期のメンタルヘルスに関する基礎知識や関係機関との連携、産後ケア事業の流れや事例を学ぶことで、妊産婦への適切な支援につなげることができる人材を育成する目的で開催した。
【講演Ⅰ】
●産後うつ病について
・うつ病の診断基準(DSM-5)の中で、「抑うつ気分」は本人が気づかないことが多い。「思考力や集中力の低下」があると自殺につながる可能性も高くなる。支援者は本人の思考の固さを確認することが大事。
・産後うつ病の特徴として「自分は母親失格だと自ら責める」「子供が怖い」「泣くと動悸や汗が出る」という特徴もある。「産後うつ病」の原因はホルモンの急激な変化や、不眠、環境変化となっており特に帝王切開や早産の方はリスクが高くなる。
・「産後うつ病」とまとめられている中には、発達障害や統合失調症などの精神疾患が元々あった中で妊娠・出産・子育てという負荷がかかり精神疾患の症状が表面化されているケースもある。産後うつ病は必ず終わりがくることを伝えていくことが大事である。しかし、元々ある統合失調症などの精神疾患は薬物治療が続く場合もある。
・治療の課題としては、産後うつ病とわかっていても乳児の世話をできる支援者がいないと通院や入院も困難である。母子分離せずに入院し育児支援と精神科の介入ができる環境づくりがベストである。
【講演Ⅱ】
●産後の月経、帝王切開後の傷のケア
・産後の月経再来は個人差が大きく分娩後平均2~3か月後。
・帝王切開の分娩が増加しており、傷のケアが重要になってきている。中には、傷がケロイド状になる人もおり、皮膚科や形成外科の受診が必要な方もいる。傷が治癒する期間は、少なくとも3カ月といわれている。原因としては、局所因子(物理的な刺激、汗など)や生活習慣、体質などが原因となっております。現在では、傷のケアとしてテープなども多く出ている為、テープでの治療や長めの入浴を勧めている。
●児童虐待からみた社会的ハイリスク妊産婦
・こども虐待による死亡事例等の検証結果によると、主な加害者の半数は「実母」である。また、半分以上が「予期しない妊娠/計画していない妊娠」「妊婦健康診査未受診」の方である。
●妊産婦のメンタルヘルスケア
・周産期死亡、乳児死亡率等は低く母子保健は世界一の水準だが、産後1年以内の妊産婦死亡では自殺の頻度が最も多い。東京都の妊産婦自殺率はイギリスの4倍近く。
【取組発表1】
●都城市の産後ケア事業について
・通所型、訪問型、宿泊型を実施している。産後ケア事業を実施できる医療機関は市内で1ケ所、助産院は9カ所ある。申請理由で一番多いのは「育児について不安がある」という理由であった。
・申請者数と利用者数は令和3年度から増加しているが、申請者数(R5.71名)と利用者数(R5.49名)に開きがあることが課題である。また、利用者数は増加しているが、社会資源に限りがある為に需要と供給のバランスや、本当に必要な人に行き届くか、財源の確保が課題である。
【取組発表2】
●中山産婦人科医院での産後ケア事業について
・対象者は当院で分娩した方、妊婦検診を受診した方。通所型と宿泊型を実施。
申請は本人が行い、申請した段階で保健センターに情報提供(支援が必要な理由等)を行う。
・今後の課題としては、地域格差、経済格差による産後ケア利用に差がある。また、都城市外の方の費用が高いことや、分娩や緊急帝王切開が重なり産後ケアの人員配置が難しかったり、受け入れ困難な時がある。
【取組発表3】
●県助産師会の産後ケア事業について
・県内では37カ所の助産院が産後ケア事業を実施している。通所型、訪問型、宿泊型を実施。
・ケアする側もポイントは、母親の心と体の疲れをとってあげることが目的。傾聴、共感を行い安心や穏やかさ、喜びを感じられる場所を提供する場。
・行政や各機関との連携が大切。産後ケアが必要な人を早くキャッチ。制度を知らない母達が多い。
里帰り出産や居住地以外でも産後ケアが受けられることが必要。
令和5年度 母子保健指導者研修会を開催しました
■日時:令和5年11月16日(木) 13時15分から16時30分まで
■開催方法:集合及びオンライン(Zoom)
■会場:宮崎県総合保健センター5階大研修室
■対象者:行政の母子保健・子育て支援担当、産婦人科医療機関職員等
■参加所属数:35箇所
■参加者数:88名
■プログラム:
行政説明 宮崎県福祉保健部
健康増進課 母子保健・医療支援担当 主事 有村 龍也 氏
講演Ⅰ「不妊治療の現状」
講師 ARTレディスクリニックやまうち 院長 山内 憲之 氏
講演Ⅱ「不妊症に悩む女性への心理支援 ~支援者の方に向けて~」
講師 よこやまクリニック 院長 横山 顕子 氏
情報提供 「宮崎県における妊孕性温存補助事業について」
講師 宮崎大学医学部発達泌尿生殖医学講座
産婦人科学分野 教授 桂木 真司 氏
■内 容:
当研修会は、県委託事業として母子保健サービスの第一線で活動している関係者を対象に、実践に即した研修会を行うことで地域での母子保健活動の向上を図る目的で開催している。
今年度は、令和4年度から保険適用が開始された不妊治療をテーマに、現状とその支援について学ぶことにより、地域のニーズに沿った支援の実施に繋がることを目的とした。
開催方法は集合・オンライン(ライブ配信)のハイブリッド形式で、全体で35所属(市町村19、保健所6、医療機関7、関係機関3)の参加があり、会場への来場者10名、オンライン参加者は78名であった。
行政説明では、宮崎県健康増進課有村主事による不妊治療の動向、「宮崎県不妊治療費支援事業」の制度や助成内容の概要等についてご説明いただいた。
【講演Ⅰ】
ARTレディスクリニックやまうちの山内憲之先生より、不妊治療の流れから治療の実際について、病態生理・解剖整理から詳しい資料をもとに解説いただいた。不妊症の原因は、女性側にあると思われがちだが、今や男性側に半分の原因があることが分かっており、原因不明も併せてパートナーと一緒に検査や治療に取組むことの大切さが示された。
今後の課題として、不妊治療は今後ますます進歩し出生数も増加が見込まれることから、仕事との両立をサポートし少しでも相談・治療のしやすい環境づくりが大切である。さらに、がん・生殖の分野をますます充実し拡大する観点から、「宮崎県妊孕性温存療法費用助成事業」が紹介され、がん治療において抗がん剤使用前に卵子精子を保存していく治療とその助成制度についても必要な人に利用してもらい、将来の希望につなげてほしいとお話いただいた。
【講演Ⅱ】
よこやまクリニックの横山顕子先生より、不妊治療を受ける当事者の心理と各支援者に求められる希望的視点についてお話いただいた。実際に不妊治療が開始されると、ジェットコースターのような気分の浮き沈みと先の見えないトンネルにいるような感覚に陥ることから、不妊治療を受ける女性の半数は治療開始の段階で既に軽度以上の抑うつ症状があるとされている。不妊の喪失の特徴としては、「あいまいな喪失」:存在した人を失うのではなく、「これから生まれる子ども」を失う体験で非常に複雑である。不妊の喪失を理解したケアの基本は、妊娠することに絶対的な価値をおかない心理支援者の存在意義である。関係者全員の受容的な温かい態度、現実感のあるポジティブな声掛けも重要となることをお話いただいた。
【情報提供】
宮崎大学医学部発達泌尿生殖医学講座産婦人科学分野の桂木真司教授より、「宮崎県における妊孕性温存補助事業」についてご説明いただいた。がん・生殖医療は、がんサバイバーの生児獲得のために、①がん治療により根絶してしまう可能性のある患者の妊孕性を温存する医療=将来の選択肢を残す②子どもを授かるかどうかの選択肢を情報提供する医療=意思決定支援を重要な目的としている。妊孕性低下リスクのあるがん治療には放射線治療と抗がん剤治療があり、これらの影響で若くして閉経状態になると妊娠は難しくなる。
宮崎県では、「宮崎県がん・生殖医療ネットワーク」として、がん診療施設でがん治療前に妊孕性温存療法の説明を行い、宮崎大学医学部附属病院でのカウンセリングを経て、ARTレディスクリニックやまうちにて凍結・保存など妊孕性温存療法を実施する。これらの助成相談等は県健康増進課で担っており、3者のネットワークにて動いていることをご紹介いただいた。
参加者からは、「不妊治療の知識がなければ当事者への理解も難しいので、今後さらに理解を深めたい」「妊孕性温存補助事業は未来につながる事業だと感じたので、情報提供していきたいし、もっと広がっていってほしい」等の声が寄せられ、今回の学びを今後の活動に活かしていきたいとの意見が多くみられた。
令和4年度 母子保健指導者研修会を開催しました
■日 時:令和4年10月4日(火)13時20分から15時35分まで
■開催方法:集合及びオンライン(Zoom)
■会 場:宮崎県総合保健センター5階大研修室
■対象者:行政の母子保健・子育て支援担当、子育て支援団体、産婦人科・小児科医療機関職員等
■参加所属数:40箇所
■プログラム :
行政説明:宮崎県福祉保健部健康増進課 母子保健・医療支援担当主査 寺町 真由美
講 演 :「低出生体重児の成長発達とその支援」
講師 宮崎大学医学部 発達泌尿生殖医学講座
産婦人科学分野 教授 児玉 由紀 氏
事例発表:「リトルベビーの家族として感じること」
講師 宮崎リトルベビーサークル結~ゆう~ 代表 増田 杏那 氏
■内 容:
当研修会は、県委託事業として母子保健サービスの第1線で活動している関係者を対象に、実践に即した研修会を行うことで地域での母子保健活動の向上を図る目的で開催している。
今年度は、低出生体重児とその家族へ切れ目のない支援体制を構築するため、低出生体重児のおかれている状況を知り、必要な支援について学ぶことにより地域のニーズに沿った支援に繋がることを目的とした。
開催方法は集合・オンライン(ライブ配信)のハイブリッド形式を採用し、全体で40所属(市町村22、保健所3、県所属部署5、医療機関4、関係機関6)の参加があり、会場への来場者7名、オンライン参加者は91名であった。
宮崎県健康増進課寺町主査による低出生体重児の定義、出生数・出生率の動向比率、制度や行政サービス等についての行政説明に引き続き、宮崎大学医学部教授 児玉 由紀先生に講演いただいた。
講演では、宮崎県の周産期・新生児医療の中心である宮崎大学医学部附属病院総合周産期母子医療センターのセンター長を兼任されているご自身の活動を中心に、世界の中でも優れた周産期・新生児医療の日本の現状と国際比較、またその中でも宮崎県のトップレベルの周産期死亡率の低い現状と沿革、県内の周産期医療体制等についての解説、また出生数の減少と早産・低出生体重児の比率の漸増傾向とそれに至る背景、出生後に起こる新生児のハイリスク合併症の様々な病態の解説や低出生体重児の母親の心理状態、入院から退院へ向けた支援の状況とその必要性について講義された。
また極低出生体重児の乳児期の身体発達曲線(母子手帳掲載)は専用のものが必要であること、また運動発達の評価についても修正年齢で評価を行うことが適切であること等お話をいただいた。
後半では、極低出生体重児の事例報告として象徴的な2例をご家族の記録と体験談として報告いただき、研修会参加者から「早産児・低出生体重児とその家族の支援を行うにあたって知識・知見を深める良い機会になった」との意見が数多くあった。
事例発表では、宮崎版リトルベビーハンドブック製作に携わり、双子の極低出生体重児の出産の経験をもとに、ご自身の体験について発表いただいた。医大に救急搬送され、母子共に危険な状態であるため、母体保護法で定められた人工妊娠中絶の最終期限(22週未満)で突然に命の選択を迫られたつらい思い、出産直後の早く小さく生んでしまった罪悪感、看護スタッフの祝福の言葉が胸に刺さるような複雑な気持ち、児と別の病棟へ入院となった孤独感、搾乳のつらさ、初めての児との面会時に感じた感謝の気持ちよりも後悔の念と将来への不安感等、当事者でなければわからない心情を赤裸々にお話いただいた。
しかし、その中でも笑顔で励ましてくれるご主人の姿や、面会のたびにかけられる医師、看護師の優しい声かけ、先輩の早産経験者との出会い、地域の助産師の助言や励ましなどにより少しずつ前を向くことができるようになったとのことである。
その後、母子健康手帳の不備を感じているところにサブブックの存在を知り、宮崎版リトルベビーハンドブック作成を県に要望し、同じ経験をしている低出生体重児の母親のためリトルベビーサークルを立ち上げた経緯などを発表いただいた。
参加者からは「当事者の正直な気持ちを聞くことができ、声かけ支援について考える機会をいただいた」「ご家族と一緒に子育てを見守る為には何ができるのか...今一度考えたい」等の声が寄せられ、児の支援、家族の支援を行う際の声のかけ方、寄り添い方など心構えについて再考させられる有意義な発表内容であった。
(講演)
(事例発表)
令和3年度
■日 時:令和3年10月7日(木) 13時20分から16時00分まで
■会 場:オンライン研修(各所属先もしくは宮崎県総合保健センター 大研修室)
■対象者:市町村及び保健所の母子保健担当者 等
■参加所属数:24箇所
■プログラム:
講演Ⅰ 「多胎児家庭の特徴と支援~多胎家庭の理解と支援のポイント~」
講師 一般社団法人日本多胎支援協会 理事 落合 世津子 氏
講演Ⅱ 「多胎家族教室~概要と事例~」
講師 一般社団法人日本多胎支援協会 理事 落合 世津子 氏
講演Ⅲ 「多胎家庭を支援するピアサポート
~福岡県久留米市ツインズクラブの取り組みから考える~」
講師 一般社団法人日本多胎支援協会 理事 村井 麻木 氏
事例発表 「ふたごちゃん・みつごちゃんとその親の世界へようこそ!」
講師 社会福祉法人すこやか福祉会 おやこの森 施設長 小澤 のり子 氏
■内 容:
当研修会は、県委託事業として行政の母子保健・子育て支援担当、子育て支援団体、産婦人科医療機関職員等を対象に、多胎家庭への切れ目のない支援を構築するため多胎家庭のおかれている状況を知り、必要な支援を検討する機会とすること及び研修を受講することにより地域のニーズに沿った多胎児支援の具体的な実施に繋がることを目指し開催した。
開催方法は集合及びオンライン研修として企画し、全体で24所属(市町村12、保健所3、県所属部署3、医療機関4、関係機関2)の参加があり、会場への来場者6名、オンライン参加者は70名であった。
研修会に合わせて各自治体に多胎支援の実施状況についての事前アンケート調査も行ったが、現在のところ多胎支援に関する事業を行っていない自治体は77%あり、そのうち今後も実施予定のない自治体は82%にも上った。
講師には、多胎家庭の支援に関わり活動を行われている3名の先生にご講演いただいた。
講演Ⅰでは、ハイリスクで負担の大きい多胎児の妊娠・出産・育児について、自身の多胎児育児経験及び一般社団法人日本多胎支援協会理事、おおさか多胎ネット代表としての活動をとおしてその基礎知識、支援の必要性、家庭支援のポイント、地域支援の具体的な方法と活用できる社会資源の紹介等講義をいただいた。
またこれからはじまる多胎妊婦・多胎家庭支援制度の解説と様々な支援を行う際の具体的なポイントについて講義いただき、実際に活動する際に大いに参考となる内容であった。
講演Ⅱでは、多胎家族教室は、自治体や医療機関、民間の支援団体等において、多胎家族が単胎児とは違う多胎妊娠・出産・育児について家族が共に学ぶことで安全に多胎児を迎える準備を整え、孤立化しやすい多胎妊産婦家庭同士の共感や情報共有、仲間づくりをすることにより、妊娠・出産・育児に関する不安や負担感、孤立感の軽減を図ることを目的としていること。またその内容は多胎家族が多胎妊娠・出産・育児についての基礎知識を理解・共有できるための講義や経験家族との交流会がメインであり、その運営のポイントや具体的事例の紹介等について講義いただいた。
講演Ⅲでは、多胎家庭を支援するピアサポートとは、多胎妊娠・出産・育児の経験者(先輩ママ、パパ)が、後輩ママ、パパを支える活動を言い、専門職とは違う生活者・経験者としての視点で支援を行うので現状に即した創意工夫等の情報が豊富で、共感性が高く説得力があること等についてお話をいただいた。
また、福岡県でのピアサポート支援事業の具体的な取り組み事例とピアサポーターの養成方法等について講義いただき、地域で多胎家族支援事業を行う際の参考にしたいとの意見が多々あった。
事例発表では、宮崎県延岡市で20年以上の活動を続けている社会福祉法人すこやか福祉会おやこの森と「双子の会」の活動についての報告をいただいた。
会ではこれまで①地域子育て支援拠点事業、②病後児保育事業、③ファミリーサポートセンター事業、④子育てサポーター家庭訪問事業(ハイリスク家庭対応)、⑤利用者支援事業、⑥ひとり親家庭情報交換事業等を延岡市と共に取り組んできており、令和3年度からはさらに多胎妊産婦の健診時、多胎児を持つ親(ピアサポーター)が保健師と共に訪問同行サポートを行う、多胎児妊産婦等支援事業も開始されているとのことであった。
研修会参加者からは「県内に先駆的なピア事業を開始されている地域があることを知ることができた。他自治体への見本や刺激になると感じた」等の声が数多くあり、有意義な発表内容であった。
令和2年度
■日 時:令和3年1月19日(火) 午後1時30分から午後3時50分まで
■会 場:オンライン研修(各所属先もしくは宮崎県総合保健センター 大研修室)
■対象者:市町村及び保健所の母子保健担当者 等
■参加所属数:17箇所
■プログラム:
講演Ⅰ 「多胎家庭支援に向けたふたご手帖作成の経緯」
講師 金城大学 看護学部教授 彦 聖美 氏
(ふたご手帖プロジェクト代表)
「ふたご手帖の紹介」
講演Ⅱ 「多胎妊娠・出産・育児の特徴とふたご手帖の使い方」
講師 NPO法人いしかわ多胎ネット 理事長 山岸 和美 氏
(ふたご手帖プロジェクト委員、助産師)
講演Ⅲ 「多胎家庭への行政保健師の役割」
講師 多胎育児サークルハッピーキッズ旭川支部 代表 金森 聖美 氏
(ふたご手帖プロジェクト代表 、保健師)
講演Ⅳ 「多胎家庭における当事者グループ支援の果たす役割」
講師 さが多胎ネット 代表 中村 由美子 氏
(ふたご手帖プロジェクト委員)
■内 容:
新型コロナウィルス感染症拡大の状況を鑑み、オンラインで研修会(Zoom)を開催した。
母子保健に携わる市町村や保健所の担当者等を対象に、多胎家庭への切れ目ない支援を行うため、地域のニーズに沿った多胎支援の具体的な展開に繋げることを目的に研修会を開催し、17所属の参加があった。
講師には、ふたご手帖プロジェクトとして、ふたご手帖作成に関わり活動されている4名の先生にご講演いただいた。
講演Ⅰの彦 聖美 氏の講演では、多胎育児のおかれている現状や課題、ふたご手帖の作成の経緯について話された。行政において平等性の観点から多胎家庭というだけでは支援の対象になりくい現状があるが、多胎家庭に対する支援を集団という視点で捉え、多胎家庭にやさしい社会は育児家庭全てにやさしい社会というユニバーサルデザインの考えを持つことが大切であり、また、早め早めの支援、育児負担を具体的に想像し、なんとなくの支援から、根拠のある指導、自信のある支援をふたご手帖を活用して行って欲しいと話された。
講演Ⅱの山岸 和美 氏の講演では、多胎妊娠は妊娠早期からの介入が可能であり、支援の必要な時期が予測できるので、多胎育児サークルに参加する人を待つのではなく、情報が行き届かない家庭、情報があっても活用できない家庭を妊娠初期の段階から積極的に支援していくことが大切である。支援者は、多胎妊娠の特徴と様々なストレスにさらされている多胎家庭の現状を理解した上で、多胎の大変さだけを伝えるのではなく、妊婦が早めに前向きな気持ちになれ、自己効力感を持て妊娠・出産・育児が行えるよう支援していくことが重要であると話された。
講演Ⅲの金森 聖美 氏の講演では、行政保健師の役割として、多胎育児の困難性を理解し、家庭状況に会わせた指導、組織としての支援体制の構築していくことの重要性を話された。また、母子手帳交付時と妊婦訪問時のふたご手帖の使用方法やどのような声掛けをどのタイミングでしたら良いか等実践に沿って具体的にお話いただいた。
講演Ⅳの中村 由美子 氏の講演では、育児の大変さを自身のふたごの妊娠、出産、育児の経験をもとに話された。ピアサポーターの人材育成や多胎家庭が出産してからの生活をイメージし覚悟を持って育児に臨めるよう、妊娠期から切れ目ない支援を行うため医療・行政・当事者グループが連携して支援していくことが大切であると話された。
参加者からは、「自分自身も多胎家庭へ十分な指導ができているか自信がなかったため、ふたご手帖は大変勉強になった」、「当事者でしか分からない悩み、大変さを支援者側が具体的にイメージしていくことが大切だと感じた」、「市町村単位では多胎児の数も少ないため、ピアサポートについては県単位でも一緒に動いて一緒に支援できたらと思う」等の意見が多く聞かれた。この研修会が、多胎家庭の現状の把握や具体的支援を知るよい機会になった。
令和元年度
■日 時:令和元年10月18日(金) 午後1時から午後3時40分まで
■会 場:宮崎県総合保健センター 大研修室
■対象者:県・市町村の母子保健、医療、福祉、教育等の関係者
■参加者数:188名
■プログラム:
〈講演Ⅰ〉 育てにくさを感じる親に寄り添う支援
~気になる子どもをどう理解し、どう接していけばいいのか~
講師 どんぐりこども診療所 院長 糸数 智美 氏
〈講演Ⅱ〉 早期支援を支える地域支援体制
~発達障害者支援センターと地域の役割~
講師 宮崎県中央発達障害者支援センター センター長 水野 敦之 氏
■内 容:
母子保健サービスの第一線で活動している母子保健関係者を対象に、親や子どもの多様性を尊重し、それを支える社会の構築に必要となる知識や相談支援の対応技術等に係る知識の獲得を目的とする研修会を開催し、188名の参加があった。
講演Ⅰ糸数 智美氏の講演では、「育てにくさを感じる親に寄り添う支援~気になる子どもをどう理解し、どう接していけばいいのか」と題し、人間の土台となる乳幼児期の関わりがその後の子どもの成長発達にとって重要なこと、困っている子どもやその親に対してどのような関わりをしていけばよいかなど具体的な事例を交えながらの講演でした。例えばスマートフォンの普及により、愛着形成や子どもの体、心の発達に大きな影響が出ており、それを解決するためには、幼い頃からさまざまな「実体験」を子どもに積ませることが重要であると話された。
参加者からは、「日ごろから気になっていることや最近の問題点への対応方法などを学ぶことができました。」や「自分のこどもに置き換えて話を聴いていました。できない原因を子どもに向けていたが本当はその根っこの部分に目を向けていなかったと反省しました。」といった意見が多く聞かれ、参加者自身の日々の子育てや業務の振り返りになったようだった。
講演Ⅱ水野 敦之氏の講演では、「早期支援を支える地域支援体制~発達障害者支援センターと地域の役割~」と題し、発達障害をネガティブに考えずポジティブに地域全体で捉えていくことの重要性や生活年齢で子どもたちを見るのではなく発達年齢で見ること、それぞれの段階に合ったサポートをしていくことが必要であることを話された。また、発達障害者支援センターの今後の取り組みについては、各地域を周りそれぞれのニーズや課題を抽出、支援の底上げができるようにサポートしていくとのことだった。
参加者からは、「発達障害をポジティブに捉えると言う視点が大切だと感じた。」「今回お話いただいた具体的なサポート方法を取り入れていきたい。」や「発達障害者支援センターの今後の役割・支援の方向性がわかりました。自分たちも取り組めることからがんばりたい。」などこの研修で学んだことを今後の活動に活かして行きたいといった意見が多くみられた。
平成29年度
■日 時:平成29年7月27日(木)午後2時から4時15分まで
■会 場:宮崎県総合保健センター 大研修室
■対象者:宮崎県、市町村の母子保健・医療・福祉・教育関係者等
■参加者:181名
■内 容:
[行政説明]
「宮崎県の母子保健事業の取り組み」
宮崎県福祉保健部健康増進課 課長 矢野 好輝 氏
本県の合計特殊出生率や周産期死亡率は、全国より高いレベルにあるが、人工死産率については全国平均を大きく上回り、平成22年から25年までワースト1位、平成26年からはワースト3位である。
人工死産率の改善のため、人工妊娠中絶に関するアンケートを実施した結果、「人工妊娠中絶をした者は公的な相談窓口やピルを知らない者が多い」等の特徴を得た。その対応策として、健やか妊娠サポート事業を実施し、思春期教育(ピア・カウンセリングなど)、産科医療機関における家族計画・避妊指導、女性専門相談センター「スマイル」における「思いがけない妊娠への対応」等を実施している。
[講演]
「乳幼児の栄養と身長~乳幼児健診と栄養指導で見ておきたいポイント~」
宮崎大学医学部生殖発達医学講座小児科学分野 麻田 智子 氏
乳幼児の栄養は、生命維持とともに成長、発達に関わるものであり、エネルギー、栄養素の体重当たりの必要量は年長児や成人に比べて多い。特に3歳までの身長の伸びは栄養の影響がとても強く、体重が増えなければ、将来の低身長につながる。また、低出生体重児(出生体重が2500g未満の赤ちゃん)は、3歳までに標準範囲内のSDスコアに追いつけるように支援できなければ、その後、標準身長、体重に追いつかないことが多い。
1歳半・3歳半健診で低身長精密として当院(宮崎大学医学部附属病院)紹介となった者(平成23~25年度)のうち、約3割は当院での再測定で-2.0SD以上の正常身長であり、測定過誤が疑われた。測定過誤を減らすため、健診会場で低身長児は2回測定する等工夫することが必要である。
また、栄養指導するうえでは、児の生活状況を把握し、正しい知識を提供することが重要である。数回栄養指導を行っても児の体重が増加しない場合には、器質的疾患が原因であったり、脱水などの医療を必要とする状況だったりする場合もあるので一度医療機関受診が必要である。